心の病気について

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こころの健康SOS

こんな時に、お読みください。
・こころの健康がちょっと心配な人がいるんだけど、どうしたらいいのかな
・自分自身のこころの調子が良くないと思うとき

こころの健康SOS

精神科・神経内科・もの忘れ外来 分野病院

こんにちは!

私たち精神科看護師は、こころの健康を崩してしまった人たちのケアをしています。こころの健康も体の健康と同じように早め早めの対処が大切です。

あなたのこころは元気ですか?

人生のトラブルにぶつかることは、実は人間が大きく成長し、たくましく生きるための練習する大事なチャンスです。いろんな人との出会いを通して、みんなの力を借りながら対処できると喜びも大きいし。あとで振り返ってみると、自分にいろんな知恵や力が身についていると気づくこと、ありますね。

一人であまり頑張り過ぎて閉じこもってしまうと、ますます苦しくなって、こころの健康を損なってしまう可能性もあります そんなときは私たち精神科の看護師を役立ててください。

私たちは実際、こころの健康を崩した人たちが回復するまでの道のりをたくさん応援してきました。今あなたが苦しんでいることは、決してあなただけの苦しみではなく、少し時間がかかることもあるけれど回復する人もたくさんいます。

だから、“閉じこもったり、ふさぎこんだり、誰かのせいにする”のはちょっと待って!

自分自身の調子が悪い時やこころの健康が心配な人がいるとき、どうすればいいのでしょうか。

“腫れものに触るように接したり、励まし過ぎたり、避ける”のも、ちょっと待って!

周囲の人たちの接し方で、こころは微妙に弾んだり沈んだり。さりげない関わりや学校や職場の協力で、回復することも多いのです。

このページは病気の知識ではなく、精神科の看護師が「その時に何が起こっているのか、どうすればいいのか」を解説します。一緒に考えてみませんか。

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長い人生山あり、谷あり

幼い日から成長して、独立して社会で活動し、年代に合った役割をとっていく人生は、長い旅をするようなものですね。穏やかな草原や豊かな田畑や森もあるし、険しい山や深い谷、大きな河もあり、大勢の人とふれあい、すれ違います。社会の動きの中で、楽しみ、喜びとともにいさかいやトラブルにぶつかってもいろんな出会いから力をもらって、歩むことができたらいいですね。

人生には転機があり、別れもあります。苦しくて落ち込んだり、自分の中のいやな面気付いたり自己嫌悪になりながらも、いろんな力を借りながら努力し何とか危機を乗り越えられた時のうれしさはひとしおです。過ぎ去ってみると、自分にいろんな知恵や力が身についていると気づくこと、ありますね。人生のストレスやトラブルにぶつかって対処することが新しい出会いやスタートにつながることもあるでしょう。

でも、・・・・思いがけず、心の健康が危機にひんすることもあります。

この苦しさは問題は乗り越えられそうもないと思ったら?

誰にも会いたくない、誰とも話したくない、日常生活ができないほどこころの苦しみがずっと続くときは・・・・「助けて!」とSOSの声をあげていいんですよ。

「何かに苦しんでいるのかな」と気になる人がいる時は?

友人として声をかける、話を聞く、見守る、近づいてあたたかい手を差し伸べる。こんなちょっとした思いやりが大きな助けになります。

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こころのSOS 1 会社員の場合

認められて出世したのに

仕事ができると認めらて、課長に昇進して思いきり働いていたAさん。 ある出来事から「上司も部下も、私を認めていないのでは?」と気になるようになりました。最近は眠れなくなって、食欲もありません。仕事の能率も下がり、何をするのも面倒な気持ちで、些細なことで不安になります。心療内科を受診したら、うつ状態と言われ、医師から少し休むように勧められました。
会社員の場合
職場の戸惑い

従業員100名の会社。厳しい経済情勢の中、職場の環境は忙しさを増すばかりです。うつ状態までは行かなくても、ほとんどの社員はストレスを感じながら働いています。
このような職場で働いている同僚は、うつ状態になったAさんにどう対応したらいいのか戸惑っています。
職場の上司と健康管理課は、事態を重く見て職場の近くの保健センターに相談しました。

職場で話し合う

Aさんが職場に戻ってくる前に、うつ状態についての知識を学びました、上司はしばらくの間はお試し出勤で様子をみることに決めましたが、同僚からはいろいろな意見が出ました。Aさんの業務を見直すために、Aさん自身や主治医とも話しあいました。

回復した今、振り返ると

短時間の“お試し出勤”から始めて徐々に仕事を調整し、Aさんは、外来治療は続けながら、職場に戻ることができました。Aさんは不甲斐ない自分と周りへ迷惑をかけた申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

誰もが大変な時代

今の職場では人員不足の中で目標管理は厳しく、その結果配置転換やリストラが行われています。若くて昇進すればそれだけ重い責任がかかります。家庭では子供は思春期、親の介護など家族の問題も大きくなる年代です。誰もが負担を抱え、時にはこころの健康も崩してしまうこともあります。

■ 看護師からのアドバイス: 職場の心の健康に大切なこと

必要以上に励まさない
お試し出勤は本人にとって強い緊張を伴います。ですから「頑張れ」などの叱咤激励は禁物です。今までと同じ接し方で、さりげなく本人の仕事ぶりを認める声かけや評価を伝えると良いですね。

安心して話せる仲間
健康に関する情報は個人情報です。しかし、全てを秘密にする必要はなく、本人の了解を得て必要な情報を共有しましょう。秘密を守ってくれて安心して悩みも話せる仲間はこころの健康を取り戻す時カギになります。まずは自分から誰かの安心して話せる仲間になりましょう。

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こころのSOS 2 両親と同居している息子夫婦の場合

高齢の母親が近所とトラブルを起こすようになった

Bさんは妻と自分の両親と同居しています。Bさん夫婦は仕事をしているため、日中は両親が二人だけで生活しています。ある日、父が入院したため、母は一人で過ごすようになりました。ところが、母は近所の人と茶飲み話をしながら「嫁が私の金を盗った」「食事をたべさせない」と悪口を言っているうちに、近所の人とトラブルを起こすようになりました。
近所の人が心配して「あまり深刻な状態になる前に、お母さんを専門機関に連れていったほうが良いんじゃない?」と勧められるようになりました。
高齢の母親が近所とトラブルを起こすようになった
サービスを利用するきっかけを見つかられない

どうして母がこのような状態になったのか、Bさん夫婦は戸惑っています。一方で何とかしなければという思いもあります。仕事もあり、間もなく退院する父の介護のこともあります。いろいろなサービスがあることも知っているのですが、何をどうしたらいいのかわからず、何が起きるのかわからない日々が飛ぶように過ぎています。 そもそも母は人の言うことをまったく聞かないので、素直に病院に行くともとも思えないし。この状態がずっと続くかと思うとやり切れません。

思い切って電話

Bさんは思い切って病院や市役所に電話しました。すると住んでいる地域の医療機関や相談窓口を教えてもらうことができ、早速、問い合わせてみました。その後、母が利用できるサービスがみつけることができ、自分の時間が持てるようになりました。そしてサービスを利用しているうちに母も落ち着いてきました。

■ 看護師からのアドバイス

【家族の方へ】高齢者のこころの健康サイン
食事をしたことを忘れる、性格が以前と変わった、急にトラブルを起こす、徘徊をするなどの問題行動があるときは病気の場合があるので、医療機関を受診しましょう。

病院に行こうとしても本人が嫌がり、断固拒否するときどうするか
本人が行かなくても症状や生活ぶりをよく知っている人がケアマネジャー等の専門職が配置されている包括支援センターに相談すると対応してくれます。最寄の包括支援センターは役所や役場で教えてもらえます。

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こころのSOS 3 思春期の場合

最初は若いころ

Cさんはわがままがひどくなってきたのは思春期の頃でした。両親は最初は反抗期だからと思っていましたが、そのうち昼夜逆転の生活になり、些細なことで物を投げ、暴れ出すようになりました。時には母への暴言、暴力があり、家中の壁や家具はボロボロの状態です。
思春期の場合
両親は困りはてて、外に助けを求めた

父は、母に「お前の育て方が悪い」と責めるだけでした。母は「すべて私が悪い」という気持ちに追い込まれ、腫れものに触るようにCさんに接するようになっていました。
困り果てて近くの精神保健福祉センターに連絡して事情を話してみました。病院の思春期外来を紹介してもらって受診すると「しばらく家族から離れて休みましょう」ということで入院し、精神科の病気と診断されました。
両親、特に父は、子どもを精神科の病気とは認めたくはありません。“世間体が悪い。家の恥、本人がかわいそう、私の育て方が悪かったせい”という複雑な気持ちから人に話すことができませんでした。

本人は助けを求めることができず、つらかった

実は、Cさん自身もつらい思いをしていました。周りの人の視線が怖くて、悪いことすべてを「お前のせいだ」と責められていると感じていました。急に不安に襲われたり、イライラしたり、そんな自分のつらい気持ちが相手に理解してもらえないから、気持ちが爆発して、物や人に当たっていました。そして、自己嫌悪に陥るという悪循環でした。

病気と向き合い、希望を見つける

入院中に担当看護師とCさんは、なぜこうなるのか、一緒に入院までの出来事を振り返り、具合が悪くなるときの前触れやどのように対処すればよかったのかと考えました。

担当看護師と考えた対処方法が今の暮らしの支えに

病気が悪化しないように・・・
 薬を規則正しくのむ / 睡眠を十分にとり、朝はしっかりと起きる
急に不安になったときは
 主治医がだしてくれた頓服薬をのむ / 気分転換をする / 相談できる人に話をする

同時に看護師は両親に家族会を紹介しました。最初は母が参加し、そして父も参加するようになりました。同じ経験を持つ親同士なので子供の病気のことを隠さずに話せます。父も子どもは病気だと認めて、夫婦で話しあえるようになりました。
退院後は訪問看護師が定期的に自宅に訪れ、家族と暮らせるようになりました。

■ 看護師からのアドバイス:
家族同士でお互いを責めても解決にはなりません。消耗するばかりです。

【家族の方へ】匿名で電話で相談できるところも
この両親が最初に助けを求めたのは、都道府県の精神保健福祉センターです。名前や住所を言わなくても相談できます。これが受診するきっかけになります。

【ご本人へ】具合が悪くなる前触れを知って、早めの対処
調子が悪くなる前触れは人それぞれです。例えば、生活のリズムが乱れる、食欲減退、眠れない、部屋にこもるなど。自分の前触れを知って、ひどくなる前に対処できることが回復の大きな一歩になります。

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相談窓口を見つけましょう

各地でこころの健康への支援活動が、盛んにおこなわれるようになってきました。相談窓口は公開されています。相談できる時間や曜日等は地域によって違いますので、都道府県や市町村のホームページ、保健センターが発行している広報誌などで確認しましょう。主に保健センターや精神保健福祉センター等でこころの健康相談を行っています。こころの病気や福祉制度についての相談や情報を知ることができます。

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こころの健康の相談ということ

どんな「相談」があるのでしょう?例えばこんな時に・・・

・ともかく誰かに聞いてほしい、知ってほしい
・何とかしたいが混乱しているので、問題の整理や判断する助けがほしい
・いろんなサービスがあるらしいが何が利用できるのか知りたい
・実際にサービスを利用するための手続きなど手伝ってほしい
・近所や学校や職場など周囲に状況を説明し、協力を求めたい
・ただ、つらい、まったくどうしていいか分からない。お手上げ

あなたに必要な「相談」は何でしょう?
「こういう助けがほしいのです」と素直に伝えてみませんか?

問題が複雑で深刻な場合はさらに専門相談へ・・・
病院、クリニック、精神科の病院
診断・治療が必要か否かの判断が必要なときはここへ。休養を兼ねた入院治療もあります。
さらには落ち着いて暮らせるためのサポートも・・・

・医療によるサポート:訪問看護、デイケア
・日中の活動の場:地域活動支援センター
・住まいの場:ケアホーム、グループホーム

ちょっと勇気を出して最初の扉をノックすると、そこにいるのは・・・

身近な人
家族や友人、信頼できる人

勉強会等に参加
公民館、町内会の健康教室、メンタルヘルス学習会などに参加相談も

市町村・保健センターなど
こころの健康についての相談窓口(電話や来所)

学校や職場
学校の養護教論、職場の健康管理窓口(産業医、産業保健師)

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こころの健康が危機になると

こころは見ることができません。そのための分かりにくさ
本人にとってはつらく苦しい体験なのに、周囲の人からは「怠けている」とか「わがまま」と受け取られることもあります。
周囲の人が問題を感じても、本人は「自分は問題ない。周りが問題」と思っていることもあります。
健康と病気の境目が分かりにくく、「まだ大丈夫」と頑張り過ぎたり、手をこまねいていたりしているうちに、本人の状態や周囲との関係が悪化することもあります。
自分のこころの健康のために
自分の弱みを打ち明け相談するのは、意外と難しいものです。
周囲の人もあなたの悩みが分からないと、どうしたらいいか困るかもしれません。そうならないためにも、悩みや困りごとを伝えて相談することは大事です。
時間がかかっても回復できるという心構えで苦しいことは無理しないようにしましょう。重要な決めごとは、動揺している時は避けましょう。
苦しい思いをしている家族の方へ
原因を追究しすぎず、自分を責め過ぎず、SOSを出して相談することは大事な生活の知恵です。
相談することで、一人で責任を負わなくてもすむこともあります。
家族の方も時には気分転換をしてもいいですよ。
ちょっと心配な人がいる時は
本人だけでなく、家族の方にも温かい支援が必要です。
SOSのサインや相談にはさりげなく、しっかりと話を聞きます。話を聞くのがつらい時は他の人にバトンタッチ。相談された内容があなた一人で解決が難しい時は、本人に了解を得て他の人に相談してもいいのです。ただし、噂話や世間話の話題にするのはやめましょう。
「何とかしてあげたい」とすぐに思ってしまいがちですが、治療についてむやみに意見や批判をしないことが大切です。

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実際に相談するときは

自分にあった支援者に出会うために
状況をよく聞いてくれて、一緒になって問題を整理して、対処法を考えてくれるよう依頼しましょう。
同じような立場の人(当事者や家族)と話すのも、参考になります。
回復の道では、見たくない面や感情と直面することもあります。
つらい時は無理をせずその気持ちを素直に伝えてみましょう。
賢く上手な相談のために
相談したい内容をできるだけ整理して話せるよう準備しましょう。
一番困っていて何とかしたいこと、これまでの経過などをまとめておきましょう。
受診したら「ほとんど話を聞かないのに、病名を言われお薬をたくさん出された」回復をサポートする団体に行ったら「途中から宗教の勧誘になった」などいうケースもあります。
「あれ、何か変だな」と思ったら、保健所や市町村の窓口、周囲の人に話して意見を聞きましょう。
診断や治療方針に関して、ほかの医師の意見を聴くセカンドオピニオンも利用できます

人生の喜怒哀楽、生老病死を味わい、トラブルや試練に対処しながら、いつか誰かとともに、こころは成長していきます。

※引用文献 : こころの健康SOSどうすればいいの?
(発行:(社)日本精神科看護技術協会 http://www.jpna.or.jp/

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