心の病気について
精神科・神経内科・もの忘れ外来 分野病院
認知症とは?
認知症は脳の老化による誰もが体験するもの忘れとは違い、脳が病的に障害されて起こる病気です。はじめのうちは生理的なもの忘れと区別がつきづらいですが、しだいに記憶・判断・思考などの知的能力に支障をきたして、社会生活に問題が生じるようになります。
認知症と生理的なもの忘れの違い
- 生理的なもの忘れ・・・・加齢に伴うもの忘れ
- 人の名前など思い出せないことがあるが一時的なものである。
- 認知症・・・・脳の障害による記憶障害
- ヒントを与えても思い出せない、症状が進行すると記憶・知識自体が消失してしまう。
認知症患者の予測推移
現在、患者さんの数は高齢化や診断技術の進歩などにより年々増え続け、2020年には、約300万人に達するといわれています。
認知症の種類
認知症は大きく「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」にわけられます。
アルツハイマー型認知症
脳の神経細胞が変性・減少して、脳全体が小さくなってしまう原因不明の病気です。身体的な障害はほとんどなく、認知症状のみが徐々に、しかも確実に進行していくという特徴があります。
※身体的な障害がほとんどない
脳血管性認知症
脳卒中が原因となって脳の血管が詰まったり、破れたりすることにより、片麻痺、言語障害などの身体的な障害を伴う病気です。脳卒中の発作を起こすたびに症状が悪化します。
※片麻痺や言語障害を伴う
アルツハイマー型認知症の程度
認知症状が初期・中期・末期にわけられ徐々に進行していきます。
症状の変化
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- 前期(軽度)
- 自立して生活はできるが、最近の事柄に対する記憶の障害などが目立ってきて仕事などを続けられなくなる。
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- 中期(中等度)
- 場所や時間がわからなくなり、古い記憶も失われるようになる。徘徊や異常行動がはじまり、自立が困難になってくる。
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- 末期(重度)
- 家族の名前や顔がわからなくなり、会話も成り立たない。失禁もみられるようになり、また末期には寝たきりになる。
症状の経過
アルツハイマー型認知症はゆるやかなカーブを描いて進行していき、記憶、見当識、判断力の障害とともに、異常行動・人格変化などの症状を伴います。
しかし、早期に病気を発見して適切な治療をはじめれば、症状を改善したり、病気の進行をある程度くいとめることができます。
アルツハイマー型認知症の症状
主症状に関連して、認知症の進行に伴った問題行動があらわれます。
主症状
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- 記憶障害
- たった今食事したことを忘れてしまう。
本人には自覚がまったくない。
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- 見当識障害
- 現在の日付や時間、場所、目の前にいる人が誰であるかわからなくなる。
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- 判断力の障害
- お金の支払いが適切にできなくなるなど、正しい状況判断ができなくなる。
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- 言語障害
- 相手の言葉が理解できなくなったり、自分で適切な言葉を見つけられず、流暢な会話ができなくなる。
その他の症状(行動障害)
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■ 幻覚
現実にはないものを見たり(幻視)聞いた(幻聴)とうったえる。
- こんな時どうすれば・・・。
- 本人には実際に見えたり聞こえたりしているので、否定せずに本人が安心するような受け答えをしましょう。本人の言動に動揺せず、病気として受けとめることが大切です。
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■ 妄想
実際にはなかったことを事実と思いこむ。
- こんな時どうすれば・・・。
- 間違いを正そうとして妄想を否定するとかえって興奮させてしまいます。物盗られ妄想などは一緒に探してあげるといいでしょう。
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■ 徘徊
家の中や屋外を一人でさまよい歩く。
帰り道がわからなくなる。- こんな時どうすれば・・・。
- 他の人に連絡先がわかるように工夫しましょう。ご近所や交番にあらかじめ本人の状況をよく説明し、一人でいるところを見かけたら連絡してもらうように協力をお願いしましょう。また、一緒に散歩するのもよいでしょう。
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■ 拒否
食事や入浴、介護のすべてに対して抵抗を示す。
- こんな時どうすれば・・・。
- その場は無理強いをするのではなく、本人の要求に耳を方むて可能であれば、その通りにしてあげましょう。本人が落ちついてきたところで再び声かけを試みてみましょう。
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■ 興奮
自分の行動を注意されたり、不快な出来事があると急に怒り出し、暴力に及ぶこともある。
- こんな時どうすれば・・・。
- あわてずに、落ち着いた対応が求められます。話題や状況を変えるなどしてみましょう。興奮状態が続くようであれば、医師に相談する必要があります。
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■ 夜間の不眠
昼間は居眠りしたりボーッとしているが、夜になると眠れなくなり、落ち着かなくなる。
- こんな時どうすれば・・・。
- 昼間の居眠りや運動不足が原因になっていることもあるので、日中は体を動かすようにするといいでしょう。それでも不眠が続くようであれば、医師に相談する必要があります。
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■ 失禁
認知症が進むにつて、トイレの場所がわからなくなったり、尿意を感じなくなり、おもらしが頻繁になる。
- こんな時どうすれば・・・。
- トイレの場所がわからない場合は、ドアに「トイレ」と書いた紙を貼るなどの工夫が必要です。また、時間を決めてトイレに誘ったり、部屋にポータブルトイレを置くのもいいでしょう。場合によってはオムツも考えましょう。
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■ 不潔行動
不潔なものを食べる。便器以外の場所で排泄したり、自分の便でもてあそぶ。
- こんな時どうすれば・・・。
- 物の分別、失禁の後始末がわからないためにこのような行為をします。つねに身の周りを清潔に保ち、本人の排泄にパターンを知っておくようにしましょう。また、本人が排泄物に直接手を触れないような衣服の工夫も必要です。
〈 引用文献 〉
聖マリアンナ医科大学東横病院神経精神科 部長 今井幸充 監修
『介護ノート』2001年2月 初版 2001年6月 第3版